2023 J1 第1節 柏vsG大阪「同じ配置と違う設計」

2023年2月20日月曜日

2022J1 ガンバ大阪 柏レイソル

t f B! P L

 


2023年のJリーグが開幕したぜ。

今年は声出し100%OKから開幕という、皆が待ちに待った状況。
なんでもJから海外に移籍した選手の中には、一度も応援を聴けないまま移籍してしまった選手も居ると言うことで、なんか寂しくなるね。


そんな開幕戦、柏レイソルvsガンバ大阪。


同じ配置、違う狙い



基本的な配置はどちらも共通。
攻撃時4123、守備時442というもの。

お互いにこの配置を採用したとき、真っ先に出てくる問題が
「アンカーどう管理する問題」
なのである。

442セット守備に対してアンカーというのは、隙間にズバッと刺さる。














ここを監視しないとプレスは空回りするし、気にしすぎるとCBが自由を得るというジレンマをもたらす存在がアンカーだ。
で、このアンカーにまつわる話がこの試合の見どころの一つ。


柏の保持局面の場合



まず攻撃面。
柏のアンカーを務めた高嶺は、静的なアンカーと表現すればいいだろうか。
決して中央付近から大きく動くことなく、相手の守備に対して常に影響を与えるようなポジショニングが多い。
ほったらかせば真ん中を使えるよ、と相手に突きつけながら対応を迫るイメージだ。

それに対するガンバの対応は、2トップがじりじりと絞りながらアンカーである高峰を消そうというもの。

ガンバとしてはある程度消しながら、行けるときはCBまで圧力をかけましょう、SBに出たら後ろから押し出していきましょうという準備っぽく見えた。


柏の攻め手自体は、細谷の裏取りという長所に対しての優先順位が高く、再三繰り返された。
ボールを持って前進というよりは、クリーンに運べるところまで運びつつ、裏を取れるチャンスがあれば積極的に狙う。

よって高峰にボールが入るシーンは決して多くはない。
だが、前半27分に見せたボールの受け方が秀逸だったことは特筆しておきたい。
2トップが消そうと絞った狭いパスコースを通して受け、後ろからのプレスをいなしつつより前方の味方にパスを繋ぐ。
淡々とこなしたプレーだが、このレシーブからの前進一つを見せることで、ガンバとしては警戒度を強めざるを得ない。
こういうことが出来るんだぞ、と試合中に見せることは後にずっと響くものなのだ。


あと細谷の裏取りを中心に攻めたいんだろうなあと思った理由がもう一つ、インサイドハーフがボールを引き出さないこと。
後に書くが、ガンバはこのインサイドハーフの動きがキーとなる形だったのに対して柏は引き出す動きが明らかに少なかった。
細谷の裏取りに対して近いポジションでサポートや前プレをかけやすいのでは、と筆者は思っているが真意は分からない。
ただ起きてる事象としてはそんな感じ。


ガンバの保持時


ガンバの保持に対して柏は明確にアンカーを管理する姿勢を見せる。




前線の細谷と仙頭は必ずどちらかがダワンをケアし、もう一人がCBに圧力をかける形。
パスコースを消すのではなく、マークについて管理しようという試みだ。

どちらが前後ろの担当というよりは左右移動の少ない方を担当しようという意図も見えた。

これに対してガンバはいくつかの解決策を試みる。
まずインサイドハーフが積極的にボールを引き出す。
特にこの試合では宇佐美ってこんなプレースタイルだったっけな???と思わされるほどにリズムを作りながらパスの逃げ場として機能していた。
CBにプレスがかかりダワンは密着マーク、というタイミングでしっかりとボールを引き出す仕事は彼の技術も相まってガンバの7番はみんなこうなるのかという。


このインサイドハーフの違いからチームの狙いがなんとなく違うことが分かると言える。


あと個人的に見てて面白かったのは、CB三浦が積極的に運んで状況を変えていたこと。
柏の対応手法は、CB→CBというパスに対して必ず一歩プレスが遅れる構造になっている。
二度追いするか、ダワンを捨てて前に行くか、いずれにしろちょっとした時間とスペースが与えられるのだ。
















分かりやすいのが前半35分の運び出し。これが出来るCBは貴重だ。



管理が出来なくなる柏、繰り返し押し込むガンバ



試合の流れとしては、柏の先制という動きがあるのだがこれは単純に細谷の裏取りが実ったというもの。
裏を狙い続けるメリットはこうやって一発でも成功すれば莫大なリターンがある点だ。
そしてそのリターンが計算できるだけのスピード、強さ、スタミナを持つ細谷は間違いなくストロングポイント。


だが中身としてはガンバがどんどん優勢になっていく。
柏は先に書いたように、裏取りが攻め手のメインとなるため自分たちで保持する時間が作れない。
それ自体は決して問題ではないのだが、それに対してガンバがしっかりと意図した形で保持から押し込めていたことが大きい。

また時間が進んでいくと共に、インサイドハーフの動きに合わせてダワンがポジションを変えるようになっていく。
ただでさえマークの管理に手を焼いていた柏は、この変化によりどんどん苦しくなっていく。

端的に言えば、奪うのか塞ぐのか、マークを離すのかついていくのかの判断がばらついていく。
ガンバの2点目に関して言えばGKのミスももちろんあるが、遅かれ早かれ取られていたぐらいの展開と言って良いだろう。
ダワンがシュートを打つまでの展開もまさしくインサイドハーフを起点に崩されている。


柏としては中村の投入により、インサイドハーフからパスルートを作る傾向が出来たためボールをより前進させることに成功はするが、点までは繋がらずと言う展開。


オープン合戦の果てに


お互いにオープン上等な殴り合いの様相を呈する終盤。
柏としてはボールを奪わなくてはならないため前に出るがそこを剥がされ。
ガンバもまた、構えて守りたいのだが裏には変わらず細谷、それに加え駆け引きが上手い武藤、前半とは違いパスを引き出す中盤がいるため的を絞れず応戦するような流れに。

ダワンを下げた89分を皮切りに、ガンバは後ろの枚数を増やしてゴール前での迎撃守備に切り替える。
これにより柏がボールを握る中で最後のPKが生まれるわけだが、ぶっちゃけ守れたんじゃないかとは思う。
直前のサイド近辺の崩しで思いっきり引きつけられて、結果的にファウル付近は2vs2になってるし、間を割られているのはちょっともったいない。

ボールホルダーに対して圧がかけられないと、狭いパスコースでも通せるわけで、この撤退の仕方は柏としては救われた部分もある。
もちろん大前提として、細谷の推進力が特筆すべきと言うのはある。


総評



結果としては2-2のドロー。
お互いに勝てたという手応えはありそうだが、よりやりたいことがピッチ上に出たのはガンバかなと言う印象。
宇佐美の躍動が見てて面白いし、ダワンをはじめとする周辺のプレイヤーも意図を慌てることが出来ているので変化の付け方が柔軟。
一方で守備に関してはまだまだこれからかなあと。配置どうこうの前に判断基準があまり揃ってない印象。

柏は細谷が今年はひと味違う、かも。
とはいえ4123を今後も続けるのであればインサイドハーフの役割はもう少し練った先が見たい。現状はちょっとどっちつかずで有効と言いがたく、またインサイドハーフがパスを引き出せないとアンカー高嶺の良さも出し切れなかろう。
そういった意味で途中から投入された中村の動きは好印象。

選手目線のグッドプレー


最後に、これはあんまり他のレビューで見ないので書きたいなと思っていたものを。
筆者は元々プレイヤーだったので、その目線でいいなと思ったプレーをいくつかピック。
これを読んでいる方で自身でもプレーされている方が居たら、是非確認してみて欲しい。


・5:30 柏、古賀のさばき。
 体の向きを利用して予測させない地味だけど大事なプレー。
 このプレー、技術的に難しいわけではないというのがミソ。


・17:39 柏、小屋松の仕掛け
 ファーストタッチのセオリーは遠い脚なのだが、この場面では相手よりわずかでも早く触るためにあえて内側の脚で触るという工夫が光る。
 そこで出来たDFとの距離を生かして体を前に入れ込み、いい位置でのFK+イエローカードという最高のリターンを得た。
 ボールの移動中に体の向きを作ることで、DFの体勢とボールの軌道を同時に見て判断材料が増えているのも見逃せない。


・35:47 ガンバ、三浦の運び出し。
 誰がどの選手を気にしているのか、いつ自分に向かってくるのかをしっかり観れている良いプレー。
 ただ配置を見るのでは無く、選手の意図を観れないとこの運び出しは出来ない。
 最終的に大外を捨てて自分のケアに来たところで出来たフリーを見逃さないところが秀逸。




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