2025天皇杯、柏レイソルvs東洋大学を見た雑感

2025年6月12日木曜日

2025天皇杯 東洋大学 柏レイソル

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 なんとなくこの試合を見て思ったことや感じたこと、考えたことは書き残したほうがいいと思ったので書いていく。
なお普段みたいなマッチレビューではなくあくまで
「レイソルサポが普段なかなか見れない選手たちの動きを見てどう感じたか」
みたいな話だけをするので、マッチレビューを期待した人はごめんね。ただ一応サッカー経験者だからこそ思う部分だったりもあると思うので、ちょっとでも読んでみたいと思った人はゆっくりしていってね!


保持するサッカーを志向することの難しさ


この試合、ざっくりした感想はXでも投げていた。



まあこれが基本的なスタンスというか、短めの文章なんだけどまさしく見てて思ったこと。

ちなみに大前提として、東洋大は相当に良かった。負けるなんて有り得ない!というようなチームではないということを書き残しておきたい。ただそれと、プロが学生に負けるわけにはいかないはまた別の話なのでそれは置いておく。


今日の柏は普段なかなか出番を得られない選手が多く、そういった立ち位置の選手がどれだけ普段のサッカーと同じような戦い方が出来るか、どれだけ浸透しているかという試金石となる試合の一つだった。

こういった試合はこれだけではなく、他にもあったのだが私は観れず、実質初の観戦となる。

まずもって、定位置につきましょう、相手の隙間隙間に立ちましょう、という基本的な考え方は多分浸透している。これは見てても伝わってきた。

ただ保持するスタイルを思考する難しさは、それだけでは相手が壊れないこと。いや正確には相手の思考する守備の手法やレベルによっても変わるのだが、この試合では少なくとも壊れなかった。

図に起こしたりまでは出来ないが、東洋大学の守り方としては
  • 柏の最終ラインに対してチャンスがあれば数は合わせるが前プレというよりパスの出先に対して押さえに行く
  • 中間ポジション(隙間)を取る選手を明確に捕まえずにパスが入ったら圧をかけられる位置
という雰囲気が漂っており、わかりやすくまとめるなら「立ち位置に踊らされずパスの出先で戦う」みたいな狙いを感じた。

そうなれば、ただ中間ポジションを取っているからといってパスを差し込むわけにはいかない。極端に言えばパスをスイッチとしてボールを取りに来る可能性もあるわけで、相手の誘いに対して素直に乗るわけにはいかないのだ。

となると、バランス良く配置は取れてるが前に進まない、という膠着状態に陥る。
こういったときにあえてバランスを崩す動きをすることで相手を困らせる、というのが必要になってくるのだがその動きがなかなか生まれなかった。

と同時に、前へ自らボールを持ちながらドリブルで運んで相手をつり出す、あるいはそもそもボールの位置を前進させ相手に対応を迫る、という狙いもなかなか見られなかったのもちょっと苦しかった点ではある。

普段のメンバーで言えば小泉がCBの脇まで降りて、原田が前へ押し出され、久保が内側のポジションを取ることで相手が捕まえる選手を失って数的優位を作る、みたいな。

そういった動きがなかなか現れず、前半は特に膠着状態が続いた。


で、前半に何が足りなかったのか、というのが後半になって徐々に分かっていく、というのがこの試合の面白いところでもあった。


小泉の一挙一投足に注目した後半


後半開始から渡井、垣田、そして5分後には小泉と普段試合に出ている、言い方を選ばずにいうなら「主力組」がどんどん投入されることに。そしてここら辺から、普段のメンバーとどんなところに差があるのか、というのが見えてくることになる。

そしてそれが最も現れていたのが、小泉のチームメイトに対する要求だったのではないか、と個人的に思っている。

チームメイトからの要求は最高の教材である


これは確か風間八宏が書いた本に書いてあった言葉で、俺も今ならめっちゃ同意する(選手やってた頃は負けん気強すぎて素直に受け止められなかった)んだけど、

「味方からの要求は最高の教材であり、成長に繋がるものだ」

みたいな記述があった。たぶん、1vs21の本だったと思う。

例えばバックラインでパスを回すとき、失わないように安全に逆サイドまでパスを回すとする。これが世間的に見たり、自分の主観としてみれば「しっかりポゼッション出来た」という手応えになる。ただその時に前線の味方が「もっと前に運べよ!」「今縦パス出せただろ!」と要求していれば、それは失敗かもしれない。
もちろん要求が間違っていることもあるから、全て要求に従わなかったのがダメ、というわけでもない。ただ、その要求が自分の脳内に選択肢としてあったか、なぜその選択肢を採用しなかったか、というところは問われる。

長ったらしく書いたが、簡単に言えば「この選択肢ちゃんと考えたか!?」と問われるのが味方からの要求であり、ボールを失わなかったみたいな結果論で濁らないのが良いところ。


小泉の要求と動きから考える課題とは


で、後半は小泉の動きと要求を見るのがとても面白かった。
レイソルファンが負けた試合を面白かったというのはどうなんだ、といわれればそれまでなんだが、レイソルファンと同じぐらい僕はサッカーという競技をもっと知りたいという気持ちなので許して欲しい。

小泉は右寄りのIHなので、必然的にボールの持ち手となる成瀬に対しての要求が増える。小泉は身振り手振りで成瀬に対し
「もっと前に運んでこい」「WBにパス出せるんだから付けよう」
という要求を繰り返し行い、成瀬も少しずつ適応しながらリスクを背負う選択肢が選べるように試合中で変化が起きていた。

この二つからわかることをなるべく噛み砕いていけば
  • 保持しながら攻めるためには安全策だけでは無理
  • 自ら運ぶことで相手を動かす、対応を強いること
  • 前にフリーが居ればまずパスを出し、相手に対応させてから考える
というあたりだろうか。結果が同じように下げるパスだとしても最初から下げるのではなく、なにか相手を動かすチャレンジが出来るんだからやれよ!というのが小泉の要求だったと思う。

あと実際にどんな動きをしていたか。これは渡井とかも同様なんだけど、ただ定位置を守りながら相手の隙間を狙うだけではなく、あえてボールを受けられる位置までバランスを崩して動くことで、相手にどう対応するか問いを突きつける動きが見られた。

ぶっちゃけ僕は島村にここを期待していた節がある。せっかくボールを持ったときに違いを作り出せる選手なのだから、自らがボールを引き出すことで変化をもたらせるのではないかと。だが島村は愚直に相手の隙間を狙い続け、それほど実らなかった。

総論としては、チームの土台となる考え方は浸透している。ただ、そこから先のあえてバランスを崩す、受動的なパス回しではない能動的なアタックにおいて主力組と大きな差が見えた、ということになると思う。
保持というのはボールを失わずに前進するためリスクとは相反するように見える。だがリスクを背負わなくては相手が崩れないし、そのリスクは想像するより小さい、試して駄目ならバックパスでやり直せば良いという保険が付いているのだ、ということが今後どれだけチーム全体に浸透するのかが問われるなあ、と感じる試合だった。


余談1.チーム作りと補強について


余談がいくつかあるのでまずはチーム作りについて。
リカルド監督の就任から施行するサッカーの具現化まで早かった、ということでリカルド監督の手腕をべた褒めする声が非常に多い。

大前提として、私はリカルド監督の手腕を高く評価している、それを分かってもらった上で以下を読んでほしい。

レイソルがこれだけ早くチーム作りを成功させた要因の半分はリカルド監督の手腕、もう半分は選手の獲得だと個人的には思っている。

キーマンとなっている選手の多くは補強組だ。小泉、渡井、久保、垣田、原田。
そして彼らが保持しながら相手を崩すために何が必要か、ということへの理解が深いこと。これがチームの根幹を成している。
その上で、柏にはそれらに適応できる人材がいた、ということも大きい。

小屋松、山田に関しては前シーズン中にこんな記事を僕は書いている。


ここで書いた文章を引用すれば、
小屋松山田共に守備の強度が高いだけではなく、判断や細かいポジショニングに関しても現チーム内では有数。

という選手。そんな選手が、ちゃんとタスクを整理して渡されればこれだけ輝けるのだ、ということだと思う。それは熊坂も同様。

元々柏レイソルの下部組織は、吉田達磨さんが作り上げたボール保持重視の方針で指導を受けており、適性は決して低くないとずっと思っていた。それはリカルド監督就任直後に

「ユース時代のサッカーを思い出した」

というような発言が選手から出ていたことからも伺える。

ただ、全ポジションにそういった選手が揃っているわけではない。
そういった意味で、これだけ序盤から目指しているサッカーが実現できたのは、間違いなくリカルド監督のリクエストであろう補強選手をしっかり獲得した強化部の功績が大きい。

逆に言えば全員が全員すぐに育つわけではなく、選手の習慣や思考回路を改善するにはやっぱり時間がかかるよね、というのがこの試合から垣間見えたということだと思う。


 余談2.この試合の収穫


とここまで課題について書いたものの、収穫も沢山あった試合だと思う。
一つ一つを細かく書くとボリュームが大変なことになるので、以下箇条書きでざっくりと。

  • 白井が延長戦までフルに走れる強度、ポゼッションでもチャレンジする姿勢が見えたし手塚熊坂が怪我した今、これはかなり希望だと思う
  • 同様に中川も貪欲な姿勢を見せたのが結構印象に残っている
  • 松本のシュートストップは圧巻、本当に文句なし。またポゼッションも、リスクを背負ってでも繋ぐシーンがいくつか見られていたのでチャレンジしているんだな。
  • 佐名の動きは面白かった。スピードだけではなく、ボールを引き出す動きには可能性を感じる。
  • ナベルのフィジカルはやはりロマン。背負うプレーも苦にしなそうなので、垣田的なタスクを担うのはありかもしれない。ただ木下の離脱に伴いCFの補強があるかどうかで立ち位置が決まりそう。
  • このメンツの中で見ると、田中が保持前進に対して適応してきていることが改めて分かる。運ぶ、前に付ける、というところをしっかり実戦出来てて成長を感じる部分。
  • 島村は、ボールのないところでもう一皮むけないと難しいかもしれない。ポジションをあえて崩すことでどれだけメリットを得られるかが体得出来れば一気に変わりそう。狭いところでもストレスなくボールを持てることは改めて証明されたので、ボールが無いところでどれだけ変化をもたらせるかだと思う。技術的な適性は高いはずなので変化に期待
  • この試合で成瀬は相当な経験と悔しさを積んだはず。試合の中でも成長や変化が見て取れたので這い上がってきて欲しい

という感じ。

正直、今シーズンのリーグ戦はここまで上出来すぎて優勝という文字がちらついているんだが、そもそも難易度が高いサッカーを志向している初年度という前提がある。個人的にはメンバーとサポーターへ志向するサッカーが浸透しつつ残留出来ればOK、上半分の順位(トップハーフ)でシーズンを終えれば万々歳と思っている。

その上で、先にも書いたように簡単にサッカー観や習慣は書き換わらないという難しさの中で主力を補強組中心に運用しているので劇的にサッカーが変わったように見えてしまうが、これから段々チームに浸透していったりメンバーの入れ替えによって完成度が上がっていく、まさに過渡期なんだと思う。

出来が良いからこそ要求も高くなりがちだが、そう簡単ではないということ、補強組が優秀かつ適性高い選手を取れているだけであり、サブ組も必死に適応を目指しているのだということをしっかり認識した上で見守っていきたい。

QooQ