2025 J1 第2節 柏vs川崎「柏サポ向けに新生レイソルを解説してみる」

2025年2月22日土曜日

2025J1 川崎フロンターレ 柏レイソル

t f B! P L



今年の柏は追いかけ甲斐があるぞー、と意気込んでいたのですが第1説は羊男さん(X:@hitsujiotoko09)がパーフェクトなレビューを書いていたのでそちらにお任せ。

気になる人はこちらから是非。

vsアビスパ福岡(2025明治安田J1リーグ 第1節)

ということで第2節は頑張って書くぞーと意気込んでいるところ。相手は長谷部監督で出だし好調な川崎。最近筋トレ動画を見すぎて川崎と聞くとボディビル界の川崎重工こと川崎一輝さんが頭に出てくるようになりました。




今までのレイソルを見てきたサポーターの方々からすると、今年のサッカーは超絶毛色が違うというのがなんとなく伝わっているかなとは思うのですが、じゃあどんな感じに違うんだい!と説明してみよう、というのが今回のレビューでチャレンジしたいことです。
なので専門用語をなるべく使わず、レイソルの視点から見たレビューになります、川崎サポの皆さんには大変申し訳ない。
ただ相手視点で解説を読むのも面白いと思うので、ここで撤退せず出来れば読んでみてください。



最後尾の人数合わせと前進について

まずもって、フォーメーション図というものがあります。選手がどんな形で並んでいるか、両チームの配置をざっくりと示すのに使われます。

今回で言えば、DAZN上ではこのようなフォーメーション図となっていました。


じゃあこの配置の通りにいろいろ進むかと言われるとそうではなく、割と変化が起こりやすいです。それも流れ上仕方なく、ではなく意図して行われることが多々あります。

その時に考えるべきは、「最前線と最後尾の人数合わせ」が分かりやすかったりします。

例えば川崎は自陣でボールを持つとき、後ろCB二枚が横に広がり、中盤の河原山本がちょっと降りながら計4人を中心とした保持を目指そうとします。

これに対して柏は、4人に無理矢理合わせると言うより細谷渡井小泉の3人で対応を狙っていたように見えました。
一人が一人を最初から捕まえるというより、パスの出し先を守備によって特定し、その次で捕まえるような狙い。


ざっくりと柏の構え方を図にするとこんな感じ。川崎の最終ラインに対して同数を用意するのではなく、ある程度中央を塞ぎながらチャンスがあれば同数に出来る構えを作っておく。この一人少ないままある程度なんとかする、というのが別のポジションに活きてくるのですが、それはちょっと後のお話。


この時、小屋松ジエゴはパスをもらおうと低い位置へ移動する川崎のSB、三浦と際をどこまで捕まえるかでちょっと難しい判断が求められます。
小屋松は前線での起用が中心だったということもあり積極的に前へ詰めますが、SBとしてのプレーが多かったジエゴは自分の後ろを空けすぎてしまわないか若干心配気味な様子が見て取れたシーンも。


川崎は以前までであれば多少ボールを失う危険があってもパスを繋いで前進するシーンが多かったですが、この試合では比較的リスクを避けてロングボールを選択していました。

最前線に山田というフィジカルに長けた選手がいること、そして柏の配置上サイドの深い位置にスペースが出来ることが理由かな、と思いますし長谷部監督の考え方も影響は大きそうな予想をしています。

先程のピッチ半分の図を全体に広げると、こんな状態になっています。


小屋松ジエゴが前を捕まえるべくある程度高い位置を取ると、両サイドの深い位置が若干飽きます。
この図は分かりやすく両方を空けていますが、実際の現象としてはボール側のサイドが押し上げて捕まえ、逆は多少ポジションを下げて両方が出過ぎないようにはなっていました。
また川崎のSBが捕まるのを嫌って、やや内寄りのポジショニングを取った場合、渡井あたりがSBを捕まえに行く、という形もしばしば。これはジエゴが小屋松ほど思いきって前に行かない部分を埋めているパターンだと思います。意図的か、これからジエゴがもっと前へ捕まえに行くのは変化を見ていきたいところですね。


ここらへんの動きが後述しますがかなり効いていて、次にボールがどっちに出るか分かりやすくなるので後ろはマークするべき人とマークしなくて良い人を見分けられるようになります。これが超絶大きかった。

結果として、川崎はロングボール主体、山田をターゲットにして蹴るかサイドのスペースへ蹴るかという選択がメインになっていきます。また奪う位置が低い場合は山田へのロングボール一択、というシーンも序盤はかなり多かったです。


一方柏のボール保持時。
柏は後ろ3枚並べてスタートするのに対して、川崎は山田の横に脇坂が立って2枚を形成、古賀が持っているときは放置、杉岡or原田に入ったときにプレスを始める、という形だったかなと。
ただ柏の配置は根本的に川崎の4-4-2という並びに対して、対応が難しいところに人が居続けるものとなっています。下の図がわかりやすいかな。





バチッと人数が噛み合うのはボランチの2人だけ、残りはマークが決めにくい状況になっているのが視覚的にも分かるかと思います。
特に困っていたのはたぶん川崎のSB。三浦を例に取れば、大外の小屋松に近付きすぎると小泉が空いてしまう。よりゴールに近いところから守る、という原則に従って小泉を気にすると大外で小屋松がフリーになってしまう。ここをどう管理するか、というのが川崎に対して柏が突きつけた問題となります。

22:40あたりのシーンなんかは分かりやすくて。
川崎としてはなんとか前からプレスをかけたい、と伊藤が高い位置を取りますがその更に外でジエゴが張り続け、また渡井がCB、SB、ボランチの真ん中を浮遊しているため際としてもジエゴを捕まえにいけません。よってジエゴがフリーでボールをもらえます。

更に渡井が複数人を引きつけていたことで、川崎のSB裏が大きく空き、転がすパスをジエゴが通すことで奪われるリスクが低いまま深い位置までボールを運ぶことに成功しました。



このように、相手がどう対応するか迷う理由を作り、そのミスを突いてボールを持ったまま攻め込んでいく、というのが今季柏を見る上で特徴になる点だと思っています。

なぜ何回もパスを下げてやり直すのか



このスタイルのサッカーはパスを後ろにするなよ!思い切って攻めろよ!という声も上がりがちなので補足したいなと思っております。

まずもって、サッカーにおいて「ボールを持っている」ということは基本的に有利に働きます。得点を得る権利はボールを持っている側にしかありません。
そしてもう一つ、ボールを持って前進することは守備時にも大きく影響を与えます。

ボールを保持しながらみんなで前進すると、相手チームは人数を揃えて守るしかありません。プレスをかけるにしても、より低い位置になると。そしてよっぽど変なボールの回し方(めっちゃ近付いて細かいパスをし続けたり)をしない限り、ボールを持っている側は配置のバランスが崩れにくいです。かつ、相手を揺さぶるようにボールを持っていれば、守備陣のバランスがだんだんと崩れていきます。

この状態でボールを失ったとしても、良い感じの配置で守れるし相手の攻撃は配置がぐちゃぐちゃから始まる、という有利を握ることができる、これがとても大きい。
この試合でも前半20分前後までは川崎が体勢をなかなか立て直せず柏が押し込み続ける展開と言って良い状態でした。これは柏がボールを持ちながら進んでいったおかげでカウンター対策もバッチリ取れてる、中盤もちゃんと押し上げられてる、と守備にも良い影響が出ていた面が大きいです。

これをみんなでやろうぜ!というのがリカルド監督の特色、そしてそれを実現するために選手を獲得してきた、というのが今年の柏だとちょっと知っておくと、より試合が面白く見れるのでは無いかと思います。



川崎のロングボールに対する3CBと中盤


先にも述べましたが、川崎はロングボールで一回押し上げたい、という意図が割りと強く見えました。
そこを抑え続けたのが3CBとボランチだったと思ってます。

上記したように、前線のプレッシングはひたすら追いかける!というものではなく進行方向を限定しながらボールを奪うチャンスがあれば!という狙いでした。その中で進行方向を限定することで、マークしなくても良い人やサイドを作ることに成功していました。この進行方向の限定、小泉が本当に上手です。すごい。

その結果、プレスもちゃんと必要なところでかけた上で最終ラインは山田に対して古賀+1枚カバーを取りながら対応、かつこぼれ球はボランチが挟みに行くことで回収を実現させました。捨てるところを決め、人数をかけるところを絞っていたのでロングボールに対しても良い対応が出来ていた、その背景には前線のプレッシングもある、という風が吹けば桶屋がボーカルみたいな話なんですけど。

またWBの裏に出来るスペースに関しては両脇のCB、杉岡原田が積極的に対応をしていました。
杉岡の対人能力とカバー範囲の広さは特に目を見張るものがあり、良い補強だったなあと。


前半途中からの川崎の変化

前半30分過ぎぐらいから、川崎は少し守り方を変えてきました。
それまでは川崎のSH、マルシーニョと伊藤がなるべく前からプレスに行きたい構えを見せていましたが、やや低めの位置で迎撃するような立ち位置に変更。

柏の前進は川崎のSHが動いたところを利用する、ということが多かったのでここがうごかなかくなったことで柏はてこずります。
これは今後の課題というか、プレスに出てこない相手に対してどうやって前進する穴を作るかというのは見守りたい部分だなあと。

この試合ではパスの出し入れで揺さぶりを狙いますが、バックパス時に少しずつ詰められロングボールに逃げるしかない場面も。

急になんか上手く前進出来なくなったな?というときは何かしらの要因があったりするので、流れが変わったという言葉でまとめられがちですが原因を考えてみるのも面白いと思います。




後半


後半立ち上がりから川崎はプレスを強めます。迷って揺さぶられるよりも、出し手にまず圧力をかけよう、という変化。
と同時に柏はGK小島がパス回しに参加していきます。これは川崎が変化しなくてもやろうとしていたのか、対応としてなのかは気になるところです。こういうのは見てるだけじゃ分からん!内部の人しか分からないので断言できない!

GKがパス回しに参加することのメリットは、絶対に一人多い状況を作れることです。もしGKまで同じ人数でプレスに来るとしたら、どこか一人足りない場所が出来るはず。相手GKがFWをマークするとかとんでもないことをしない限り。

逆にリスクとしては、ボールを失えば即失点のピンチにより繋がりやすいというところ。
ただ小島の補強は間違いなくGKのパス回し参加を考えてのことだと思うので、個人的には良いチャレンジだと思います。
これにより後ろが3枚から実質4枚で回す形に。前線を3枚で同数にしようとしていた川崎に対してまた問いが生まれます。

より細かい話をすると、前線を山田1枚+WGのマルシーニョ伊藤を加えて3人で柏のCB3人と同数、中盤は脇坂が管理する、という変化を付けていたのではと思います。

これで理論上川崎は4人のボール回しを3人で、あるいは3人のボール回しを2人で追いかけることになりますがこれを気合いでやり遂げようとします。結果柏は前半ほどクリーンに前進出来ずロングボールが少しずつ増えると。

それに対しての回答がたぶん垣田なのだと思います。細谷よりも高さとして起点を作れる。加えて運動量もフレッシュな選手を投入して確保しつつ、なのかな?という推測。

ボールを握られる時間が減ったことで川崎も逆に保持できることは保持していこうという姿勢を見せるように。パスミスも減り、また橘田の投入も加わってその流れは強まります。

よって後半の大勢は柏が押し込みつつ、川崎はカウンターと保持どちらでも殴り返す姿勢を見せ、前半よりもお互いにやりあうような展開となりました。

おそらく柏としては勝てた・・・という手応えが強そう。ただし後半の川崎はかなり内容が改善された部分がありお互いに悔しいタイプの引き分けだったのかなあと言う印象です。


もうちょっと川崎について


川崎は前半プレスをあまりかけずにパスの出た先から、という構えでしたが結果的にはプレスを頑張った時間帯の方が機能していた印象が強かったです。
一歩引いて構えるのであれば、もう少し柏の選手をしっかり管理して「ボールはフリーで持ってるけどどこに出すか困る」ぐらいの構え方をしたかったかなと。

個人的に見ていて目を引いたのは際。膠着気味な保持に対して内側にドリブルで運んで変化を付けたりいろいろチャレンジをしようとしていた印象です。ああいう変化を付けられるSBがいると保持も安定し、結果ロングボールと保持を良い形で選択していけそう。
柏が制限したとおりにパスを動かしてしまうと最終的に山田vs柏のDF2人、というところにロングボール蹴って回収される、という形が多かったのでそれをどう打破するか、制限するプレスに対してどうやって制限を外していくか、という点で行くとああいった大きく横へボールを動かす形は良かったのでは。

かなりスタイルというか、プレー選択の優先順位が変わっている中で試合中に修正して最終的には殴り合いまで持ち直したのは底力をめちゃくちゃ感じました。


その他柏の気になる変化色々


書ききれなかった柏の変化や気になるところがいろいろあったのでざっと書いていきます。

  • 小屋松が前向きでボールを受けられる配置なので活き活きしてて嬉しい
    • 去年までの便利屋ポジションでは苦手も含めて全部頑張っていたので、今年は得意なプレーに集中しやすいと思う
  • 垣田、めちゃいい
    • こちらも似たようなところで、やるべきことがわりとクッキリしたのは良さそう
    • タイミング良い動き出しでシャドウの二人と互いに活かし合う関係が作れそう
    • 押し込まれているときに高さで一回陣地回復出来るのもありがたい
  • 1ヶ月でここまで形作れるのか、という衝撃
    • 補強組がドンピシャで機能していることも凄い
  • セットプレー、たぶんサイズがないからいろいろ試してる
    • デザインプレーが1個でもゴールしてれば・・・
    • あとショートコーナーも、直接放り込んで勝負するより被カウンターとか管理しやすいのだろうなと
  • 今季の補強組、好きな選手が多くて嬉しい
    • ただ、名前をXとかでもっと挙げておけばドヤ顔で来たのになあと思ってたりする
    • 久保、原川あたりは特にそう
  • 小島をビルドアップに組み込むチャレンジは常にやるのか、相手が同数プレスに来たときに発動するのか今後気になる
  • ここまでチームの意図とかやりたいことがはっきり見えるチーム、という状態のレイソルを見るのがかなり久々なので単純にワクワクする。フロント含めて本気というか覚悟を感じる布陣、内容なのでレイソルサポみんなでワクワクしようぜ、という気持ちです


以上!今年のレイソルは本当に楽しみです。シーズン中盤ぐらいからおそらくいろいろ対策が回り出すとは思うのですが、その時にどうやって打破していくのかも含めて見守りたいと強く思いました。みんな頑張れ超頑張れ。

QooQ