2025 J1第21節 柏vs京都「対極的なチームが見せるそれぞれの得意と苦手、三丸の成長を添えて」

2025年6月22日日曜日

2025J1 京都サンガ 柏レイソル

t f B! P L


 

2位3位の上位対決ということでいろんな人が注目してたであろうこの1戦。

既にJリーグは日程の半分を超えたため、今年2回目の大戦となっていく。

前回この組み合わせってどんな試合だったっけ、と思ったら書き残していた。

2025 J1 第8節 京都vs柏「ハンドの解説、京都の攻撃、細谷の向き合う課題」

あーそっか京都が後半ATギリギリで追いついた上にハンドの有無でSNSが荒れまくった試合だー-など思い出す。
自分のレビューを読み返してざっくり整理すると

  • 前半、柏は3412と2トップで挑む
  • 狙いは強度高い京都の守備をロングボールで回避、だが前半半ばから2トップが2CBにがっつり捕まり保持がうまく出来ず
  • 京都の攻撃時に柏は前プレのスタートや中盤の管理が揃わず京都優勢
  • 後半柏は3421に戻し主導権を握り返す
  • だがエリアスに手を焼き、またアドリブ要素高めに見える京都の配置を柏は管理しきれず
  • 撤退守備の怪しさを逃さなかった京都、土壇場で追いつく
みたいな試合。

そして迎えた2周目の試合、というわけである。



前半に京都の守備が抱えた問題点

キックオフ、京都は深い位置で柏にスローインを強いるという策に。CL決勝でPSGがやってたやつである。
また柏もゴールキックを繋ぐことなく前線へ蹴る、というように序盤はお互いがリスクを避け、ボールを前に送り込む姿勢。

ちょっと余談だけど、チームがどういう姿勢や意志かを考えるとき、キックオフやゴールキックは結構役に立つ。突発的やイレギュラーではなく、ある程度準備して臨めるプレー、かつある程度頻繁に起こるため観測がしやすい、再現度が観れる、などなどの理由で。

京都のターゲットとなるのは原。サイズもありスピードも悪くなく、足下の技術が高いという万能のロマン。
また原が落ちていったときにはトゥーリオが中央へ入っていき同じようにターゲットとして振る舞う姿も見られる。
一応の配置としては1トップに原、その下に松田とトゥーリオなのだがここら辺は変わらず即興性も高いのかもしれない。ワイドというよりもかなりシャドウ、セカンドトップチックな動きなので原とトゥーリオどちらかはターゲットとして振る舞いましょう、みたいな約束はアルかも。


前半6分、柏がひとまずチャンスを作る。リスクを負わないとはいえ、チャンスがあると見ればGK小島も参加しての保持から一気にゴール前まで。川崎が三丸まで出るのか中川を見るのか、前プレが曖昧だった京都のズレを見逃さずに前進出来たのは柏にとって一つ理想の形だったと思う。

ここ最近ゴリゴリ評価と存在感を上げている中川、周りに指示を出しながら自分が数手先でパスを受けるビジョンが見えていて非常に良い。また柏の選手の中だとロングレンジで振り回すパスへの積極性が高いのも個人的に好きなポイント。


で、だんだん京都の守備が問題に直面し柏がボールを握るようになっていく。

さっき書いたように、WGではなくシャドウ気味、つまりは内側で振る舞うことの多い京都の松田とトゥーリオだが、それは守備でも多いように見えた。つまり4141のように構えるのではなく、4123のように前から来る。

そうなると、こんな感じ。




前から順々に捕まえようとするとどうしても両WBが空いてくる。実際は両方同時に空くわけではなく、ボールと逆サイドのWBが空く、という形。
ちなみにここまでSBが捕まえに行けば柏のIHが空いてしまうし、プレス隊を引かせるとバックラインが持ち上がれる、という状態である。



あと面白かったのは、柏がGK小島、古賀、2DHで2-2構成から前進していた12分頃の場面。

小島がCB風に振る舞い、三丸と原田を押し出すことでどうやっても前線からの守備が足りない状況を生み出していた。と同時に久保は大外に張り続けることでSBを足止めし(いわゆるピン留め)、結果的に原田の前線に広大なスペースが空くこととなる。



これがGKがポゼッションに参加する大きなメリットである。守備側のGKは絶対にプレスへ参加出来ない以上、どうしたって11vs10になる。このシーンは京都もCBが渡井についていくぐらい人を捕まえようとしていたが、その中で一人余っている場所を見抜いたのが偉い。

京都はこれを何度かくらい、結果として多少構えるような守備へと変更したんじゃないかな?と。
具体的には原が1トップで追いかけるのではなく、トゥーレルと2トップ気味の構え方。
ただそれでも柏のレイオフを活かした前進は止まらず、左サイドから攻略し先制点を得る。



先制点に見る三丸の貢献度


先週時間が確保できずに断念したのだが、三丸の貢献と成長が凄まじいのは前節から引き続いてだった。

ここまでの柏は実況や解説もよく言っていたように、「右で運んで左で刺す」という流れが多かった。
それは杉岡、田中といった守備に特徴を持つ選手が左を務め、古賀とLCBで2CB風に振る舞う機会が多かったからだ。よって久保はグループで原田と崩しに行くし、小屋松は単独勝負が多かった。

だが三丸が台頭してきたことで変化が起こる。
三丸はSBとしての振る舞いがもともと出来る上に、今シーズンに入ってから
  • 内側に入ったときのプレー
  • ファーストタッチの置き所
  • 前にスペースがあれば運び出し相手を揺さぶる
という点において大きく成長を遂げている。この試合でも先制点の前から運び出しによる前進での貢献は多かった。

そして先制点は、内側での振る舞いとSBとして追い越していくプレーが綺麗に噛み合った結果の崩しだった。ゴール直後に小屋松へパスを出した渡井と喜び合っていたのを見ても、グループで崩しの画を共有できるレベルへ一気に三丸が辿り着いたんだなあと熱い気持ちになる。

また細かいところだがニアへ垣田、ファーへ久保としっかりゴール前に人数がかけられているものかなり良かったのではないだろうか。


ただ京都もすぐに追いつく。
このシーン単体で見れば小泉と原田の受け渡しをミスらせてマークを外した米本がお見事、というシーンである、あとクロスの質がめちゃくちゃ高い。

しかし後に、ほぼ同じようなクロスから京都の得点は全て生まれることになる。

そしてトゥーレルと原の2トップ気味構えは偶然だったのか、また原の1トップ守備、ただし前から行くと言うより4141っぽい構えへシフトする京都。
ただどうしても中央の中川山田を管理しきれず、そこを経由して逆サイドへ振られてしまう。
前からはめようと前線がスイッチを入れたときに中央をカバーしきれないのが相当辛そう。
で、その大きな横断から垣田のゴールが生まれているわけで、京都は守備の修正が急務に見えた。

特にボランチとシャドウの間を使われる傾向が強く、そこを我慢強く狙い続ける山田中川に対してトゥーレル川崎あたりはかなり苦しめられていたのではないだろうか。もちろんそこに食いつきすぎれば今度は渡井小泉が降りてくるわけで、だれがどこまで誰について行くかの整理をハーフタイムに行うだろうなという雰囲気。

逆に柏としては、前半でもっと点を取って試合を決めていれば違った未来があったのかもしれない。



2段階の京都の修正と柏にあったかもしれない勝ち筋


ハーフタイムに京都はトゥーレルに代えて長沢、松田に代えて奥川を投入。
配置は変わらず、守備の意識とタスクの上手さで調整しようとしていたように見える。
中央に長沢を置くことでプレスのスタートを長沢に任せること、またロングボールでのターゲットが中央だけでなくサイドにも出来る。しかも柏の3バックの中では一番空中戦を苦手とする原田サイドであることも考慮しているかもしれない。

具体的には、柏の3バックに対して3枚絶対行きましょう、GKへ行くときはCBへのパスコースを消しながら行きましょう、とまず最前線での数的同数をなるべく作る!という気持ち。長沢の追い方が上手なので柏に対して前半よりはだいぶ制限がかかるようになっていく。


その圧縮に柏がやや戸惑いアップテンポの展開になった流れから、1点目と同じくインスイング(ゴールに向かって曲がってくる)のクロスに対して長沢。
原から長沢という不思議なクロスではあるのだが、長沢のマークを外す駆け引きとフェイクの動きが秀逸だった。
と同時に、1点目でも感じたが柏はクロスを上げる人に対しての圧がなかなかかからない。
撤退守備に入ったときに、撤退しすぎてプレスがかからないことが多く、J1レベルであれだけフリーにしてしまうとクオリティは発揮できるよねえということかもしれない。


それでも慣れてきた柏はまた保持前進を実らせ始める。
山田が最終ラインまで降りることで、3バックに対して問題を作り、山田がいたスペースを小泉が活かすことでやはり中央が空洞化。
どうしても人基準+1トップに対しての4バックの限界が見える京都。というよりもプレスのかけ方の変化に対して対応が早い柏の凄さとも言える。ついでに触れると京都は人基準が故にどうしても立ち位置がしょっちゅう入れ替わるのだが、長沢奥川のポジションを埋める貢献度が結構高くて器用に納得した部分が強い。

あとはとにかく太田のシュートストップが凄まじかった。逆に柏も小島が決定機を何度か防いでおり、最終的に3-3とはいえもっと点が入っても全くおかしくない中で両GKが相当頑張っていたなあという印象。

65分の交代で京都はミラーゲームを選択。なぜこの時間まで引っ張ったのかはちょっと聞いてみたい。ただ交代とともになので、選手のキャラクター的に早い時間から変更するというのは難しかったのかもしれない。

ただミラーにしたあとも、山田と中川の管理にやはり手こずる様相はそこまで変わらない。それ以外の場所では効果が見えるのだが、肝心要の中央付近はやっぱりノリとグルーヴでやっているようにも見える。

そして柏の三点目はマジでよく分からなかった。ショートコーナー対策に4人割き、中の原田がドフリーになるというちょっとした珍プレー。絶対ショートコーナーで来るという先入観だったのかもしれない、それを素早く察知し蹴り込んだ小泉を褒めるべきなのかもしれない、けどぶっちゃけやっちゃいけない失点だと思う。


その後も大勢はあまり変わらない。むしろ京都が前への圧を高めている分、剥がしたときに柏には広大なスペースが生まれるようになることで決定機も創出していた、ここを一つでも決めていれば未来は変わっていただろう。

あとはオープンスペースがあるが故に、アップテンポなゲームへと変貌していったことが案外柏にとっては痛かったかもしれない。剥がせれば一気に加速、奪われればショートカウンターという二択になり続けた。81分の京都の超決定機もショートカウンターだしね。

そして3度目となるインスイングのクロスから川崎がこれまた3度目の同点弾。

この同点弾以降は死闘となるものの、両者得点を奪えずにドロー。良くも悪くもエンターテインメント性の高い試合となった。


京都がどこまであのインスイングのクロスを意図的に行っていたのかは分からない。ただ結果として3点が全て同じ形で生まれたということが大きい。そしてそのクロスは古賀の後ろを基本的に狙っている。

また試合後のキジェ監督のコメントを読めば「奪った後の時間を作れば柏の陣形が崩れて攻撃がスムーズに行かない」という狙いを持って長沢と奥川を投入していたようで、そこは確かに大きく響いていた。


柏に勝ち筋がなかったわけではない。むしろ柏の一番の後悔は「3点しか取れなかった」だと思う。
チームの志向から考えても守備のために立ち位置を変えるより、ボールを握ることでピンチの数を減らす、ゲームをコントロールする、という方向に向かっているはずで、撃ち合いになったら守れなかったのではなく撃ち勝てなかったのだ、と捉えていると思う。

ただそれはそれとして、対クロスというのはおそらく課題だし、問題なのは再現性がありそうなところ。


柏の失点と評価について



京都の有識者に聞いてみたところ、そもそも京都はインスイングのクロスが得意パターンのようで、得意と不得意ががっちり噛み合ってしまった感じがあるのは大前提。

京都のクロスは古賀の頭を越え、その後ろで勝負するようなボール。そして柏は保持に貢献できる選手をセレクトしているので、古賀の両脇はSBタイプのプレイヤーとなっている。

その上で今回の3失点は、CB-WB間で結構やられたな、という印象がある。それはクロスの蹴った先だけではなく、クロスを上げる場面でもそう。

大前提として、現在の柏は高い守備力を誇る、というタイプのチームではない。失点が少ないのはボールを握れているからだと私は考えている。
ボールを握って押し込むからカウンターを喰らいにくい、相手を走らせているから消耗度合いに差が出る、などなど細かい理由はいくつかあるんだけれども。

なので、こういった失点に対して「もっと守備が強固な作りにしないと」というシフトチェンジだけはして欲しくないし、リカルド監督の起用を見ればそれを考えていないことはよく伝わる。守備だけを追うのであれば田中を起用し三丸をWBに回したり原田を下げることも出来た。
それをせずに瀬川馬場を投入したのはあくまでスタイルを変えることなくゲームを締める、あるいは追加点を狙うレベルだったのかもしれない。

であればあとは周りがそれを正しく評価することが大切だ。長崎でも解任になってしまったが、下平監督政権が終わったときと同じ過ちを繰り返すわけにはいかないのである。

ただし同じ選手、同じスタイルでも改善できるところはもちろんして欲しい。選手の個性やキャラクター的に難しくても、マークの受け渡しやボールへの圧などは改善できるかもしれない。

なによりまだリカルド政権一年目に加え故障者も続出する状況での、3位に対しての引き分けである。失点のパターンや展開にうちのめされそうにはなるが、収穫も成長もピッチ上には間違いなく見えている。それを忘れずに見続けたいな、なんて思った。


京都を見てて思うこと


京都は色んな意味で面白いなと見てて思う。まず強い。それは大前提の上で。

前から思っていたけど、チームとして緻密にやることを重ねる、というよりも誰を起用するかである程度やることが決まっていくように見える。これは名古屋とかも近いイメージなんだけど、キャスティングと組み合わせから始まるような感覚。

その上で、とにかくよく走るし真面目だと思う。人基準でいけ!といわれればしんどくてもピッチ上でなんとか帳尻を合わせながら戦う。それを可能にしているのは中盤の運動量と頭の良さかなあと思ったり。川崎米本福岡は相当に頭も身体もフル回転しているイメージ。

あとこれは井原レイソル時代も思ったけど、これだけ走ることを厭わないチームというのは得てして団結力と監督の求心力が高い。だからこそメンタルもなかなか折れないし、しぶとい。試合感想ブログとしてはどこまでが意図的でどこまでが偶発的かさっぱり掴めないので書いてて難しいし自分を試される気分になるし、良い意味でサッカーは人間がやるスポーツなんだ、ということが伝わってくるチームだなと。

そんなある種対極に位置する両チームが見せた極上のエンターテインメント満載の試合は勝敗を抜きにして、凄い満足感だった。見てて面白かったというのが一番言いたい事です!!!!!!!!以上!

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