2024年 J1第26節 柏vsガンバ大阪「構える柏、押し込むガンバ、それでもゴールは決まりません」

2024年8月15日木曜日

2024J1 ガンバ大阪 柏レイソル

t f B! P L


 

中断明けのゲームというのはマッチレビュアーにとって楽しみ半分怖さ半分、と思うのは私だけでしょうか、今までとどう変化した部分があるかが楽しみだし、それをちゃんと見付けられるか自分の眼が問われる、そんな感覚です。

ということで、中断明けはやっぱり一番見ている柏を見ねば、ということでこの試合だけは書くぞと今根性でキーボードを叩いています。

個人的に柏の課題だと思っていたのはCBボール保持時の役割整理と守備の基準点。
もう少し柔らかく言うなら、センターバックがボールを持って繋いで前進するぞ!という局面でどうやって進んでいくのかを整えることと、どこから守備をするか、ボールを奪うのか守るのか、チーム全体での守備のスタート地点とどこで奪うかの認識を揃えること。

個々の選手は頑張っているが連動性に欠け、そこを利用されるというところが目立つようになってきたのでなんとか中断期間で改善されれば、と思ってました。

一方のガンバは全然試合を見れていないが強い!という話は聞いておりましたのでどうなるかなあという。もっと試合数を見なければという気持ちもあります。


前半

柏は中断前と変わらず442。ガンバは宇佐美を最前線に置く4231なんだが宇佐美は適宜降りてきてパスを引き出すので0トップ的な動き。

柏は垣田細谷の組み合わせで2トップ。細谷は木下や小屋松と組むときに比べて、より裏へのランニングに専念できる香りがするためイキイキしているように見える。
垣田がターゲットとして誰よりも能力が高いため、細谷が万能に動く必要がそこまでなく強みを出しやすい。だからと言ってそれに縛られることなく垣田も裏を狙えるため、お互いにやりやすそうな気配は感じた。

ただCB保持時の役割分担は相変わらずという感じ。CHの戸嶋白井が一斉にCBを助けるべく同じポジション目指してダッシュしたところはちょっと悲しい気持ちになった。余りにもアドリブ過ぎない!?というか。


一方のガンバは配球が上手な一森が積極的に柏FW陣を引きずり出して、少しでも受け手に時間を与えよう、ロングボールで逃げないようにしようという構え。
宇佐美が降りてパスコースを作りに行っても山田山下倉田と裏へのランをガンガンこなせるメンツが揃っているため、隙あらば走ろうという気配もある。中でも山田はサイズが無い前線の中でも体を張って起点を作る意識があり、5分に訪れたバー直撃の決定機も山田が潰れながら繋いだところから生み出している。


一森へのプレスをかけずに2CBを2CFで見ようと構える柏に対して、早々にネタラヴィの列落ちで3vs2の構図を作り出すガンバ。それに対しサヴィオが後ろを牽制しながら一列前へスライドし3vs3に持ち込む柏。ここが柏の持っていた対策なのか、サヴィオの判断なのかは判別が難しいが良い変化だったと思う。

12:50あたりのガンバの崩しは秀逸だった。倉田のハーフスペースへの移動と同時に山田雄より高い位置に出て行く黒川。引いて構える柏に対して、ボール保持者に与えられた時間を適切に使っている攻撃、もちろん運び出しながらここを狙える福岡も優秀。


この後ぐらいから段々と柏は2CB+ネタラヴィ(ときどき鈴木)にプレスをかけず、持ち出した瞬間やパスの出先でプレスをスタートするようになる。ただ全てドン引きではなく、17:20のようにチャンスと前線がスタートを切ったら後ろもしっかりついていく、というのも実行できている。
ここの統率が早く揃うようになったところが、柏の一番大きな変化なのではと思っている。
以前のように前線は追いたい!後ろは構えたい!という認識のズレがこの試合通して少なかった。もちろんガンバのスタイルとして保持が強いからボールの雲行きが察しやすい、という相性の良さはあったが。

よって試合の大局は、構えて守る柏vs保持して崩しにいくガンバという形になっていく。
18:02のように、GK放置で残りを全部捕まえる形をとったり、ある程度前進されたら後ろ3枚放置で構えたり、構える高さは状況に応じて変えながらチーム全体で統一する守備が出来ていた柏に対してガンバがどう前進しどう点を取るか、というところが基本的な争点。

33:48のネタラヴィ→山下のボールは面白い。このスピードで中間に浮き続ける選手にピタッとボールが入るならガンバとしては積極的に狙いたい、と思う一方でこういういい位置に入った瞬間からガンバはいってこい!やったれ!的なスピード感溢れる攻撃になるのが気になる。スピード感溢れる、と書けば非常に魅力的なのだがその実ビルドアップ局面からびっくりするぐらいガサツなパワー系攻撃になりはじめるという感覚。39:27とかね、直前まで凄く丁寧なのにもったいないスピードの上げ方。
その点で言えば35:46の攻撃も近い。一見ファインセーブで防がれた、という攻撃だが宇佐美のドリブル方向やDFの寄せを見ると松本からすれば止めるべくして止めた、というシュートに近いとは思う。悪い形ではないが超決定機、とまではいかない。

前線のサイズやキャラクターを考えると、最後まで一工夫か相手をよく見て動かした方が良さそうだよなとは試合を通して思った。特にCFが宇佐美である以上、単純なクロスや無理矢理背負わせての攻撃よりもギリギリまで相手を動かしながら勝負する方が勝率高そう。37:35あたりのシーンのようなペナ角アタックを目指すのが個人的にいいんじゃないかな?というところ。それを目指せるだけの安定した前進は出来ていそうだし。


柏最大の決定機は41分。ジエゴ垣田細谷の3人がなぜかガンバの2CBを攻撃できたシーン。
30分ぐらいから柏は前線に4枚or5枚が並ぶシーンがいくつかあった。白井が最後尾まで落ち、戸嶋とサヴィオが中盤を形成し325気味に並んだり。どこまで意図的かはぶっちゃけ全然読み取れないんだけど、中断前よりは保持時の距離を近くしすぎず居るべきところに居るシーンが気持ち増えた、と思う。
ここら辺が全然断言できず超曖昧な語尾になってしまうのは、他の仕込みが全然見えないから。個々の判断が向上したのか、ガンバの捕まえ方と相性が良かったのかなんとも言えない、ここは今後見ていきたいところ。

ただサヴィオジエゴという左のコンビに対し、右の山田関根もだいぶ相互作用が出てきたのは事実だと思う。というより関根の長所をどれだけ出せるかは割と山田にかかっている部分も大きい中で絞るのか幅を取るのか、という判断を適切に出来ている印象。


前半はおおよそこんな感じ。
基本的にはガンバが保持してブロックを崩そうと目論むもなかなかスピードアップの瞬間にミスが起き崩しきれない。列降りして配置を変えても放置で442を形成する柏に対し、押し込んだ先で苦労し続ける。
ただ押し込むところまでは基本的に丁寧。44ブロックに対してどこに立てば守備をピン留め出来るのか、どこに立つべきなのかが安定している。

柏はロングボールのシンプルな攻めや中間ポジションへの中距離ゴロパスでガンバの守備の小さな破綻を突くシーンを見せ対抗していく、クロスも垣田というターゲットで可能性は感じるという展開に映った。

後半


後半開始早々の46分、一森がボール保持時に落ちてこないボランチに対してぶち切れる。
この1シーンを見ても、ガンバがちゃんと配置を意図的に取って前進しようとしていることが分かる。こういうコミュニケーションの様子は、チームとしてどこまで狙って実行しているのか、というのの貴重なヒントになるので好きです。

後半に柏の見せた235的配置はちょっと良いかもと思う。柏の両SBをWG化させることで、山田がシャドウとして内側へ、サヴィオは出し手に回ってCHの二人と一緒に3ラインを担当。
この形を取れると、大外にフィジカル活かした突破が出来るSBを配置した上でサヴィオに前向きでボールを持たせられる。賢いが突破力の面で大外仕事が難しい山田も一個内側に入ることで長所が発揮しやすい。割と良いことづくめになると思う。これが今後の試合でも出るようであれば、狙っている配置なので今後要観察。

60分頃に両者2枚交代。
65分の決定機、ガンバは理想的な形だったしなんとしても決めたかった。
44ブロックを大外経由でサイド変えつつ、ブロック間に浮いた宇佐美にワンタッチで鈴木が差し込み、DFライン前を横断して目線集めたところで逆サイドの山下へスペースと時間を作り出して打たせる、という素晴らしい形。
このタイミングでふらっとブロック間で浮ける宇佐美、差し込める鈴木が凄い。し、その後の宇佐美の判断が100点。

一気にガツッとスピードを上げて勝負に行くより、これぐらい相手を観て押し込んで決定機を確実に作っていく、というのがやりたそうだよなあという印象。
あと鈴木はマジでボール供給能力が高い。

逆に柏の史上最大の決定機は69分。引いて受けたサヴィオがジエゴにスーパースルーパス、中で木下という縦に速いシンプルな攻撃。これはもう一森を褒めるほかない。


このあとも大きい展開の変化はなく。
ただ柏の島村は良くも悪くもゲームチェンジャーとしての存在感を発揮した。ボールを持たせれば何かを起こせる雰囲気は強いしパス良し運び良しと変化を加えられる一方、守備の強度等を見るとスタメンに山田が抜擢されるのも納得というところ。

最後まで大局はそこまで変わることがなく、崩しきれないガンバと差し切れない柏、それぞれやりたいことを随所に見せながらの引き分け。


ガンバの丁寧さと柏のブロック形成


ガンバの印象は丁寧。SHとSBの位置関係を同時性持ちながら変化させることでピン留めしつつ横幅を確保し確実にプレースペースを確保し続けていたし、横幅隊も無駄に絞ることなく振り回すことに貢献。







それだけに、ある程度侵入が終わった段階から突如丁半博打気味な攻撃に打って出るのがもったいない気はしている。メンツを見てもマンパワーで押し切るというよりは狭くてもギリギリまで判断を貫いて、より可能性が高い選択肢をチョイスしたほうが柏にとって怖かったのでは無いかと思う。

ガンバは最後のフィニッシュ一歩手前を今後どう攻略していくか見てみたい。
決定機の数を重視し、チャンスがあればスピードを上げて勝負に行くのか、宇佐美が躍動したシーンのように狭いスペースでも崩す選択肢を探してじっくり攻めるのか。


柏は中断前に比べて、守備の基準点とタイミングの共有が改善。
結果としてミドルブロックを形成してじっくり待ち構えるのがベースの試合となった。
ガンバは保持して進みたい、柏は構えて守る、なのでガンバが陣地は押し込むが最後の崩しで柏が崩れない、という大局が最初から最後まで継続された。逆に言えば442の泣き所を疲れ続けたが最終局面では大崩れせず耐えきった柏、とも言えなくはない、超決定機ももちろんあったのだが。

ただこの守備強度はある程度の武器であると同時に消耗も激しい。自分たちの保持時間を確保できればペース配分もしやすいが、いかんせん押し込むまでの仕組みが完成していないため計算が立つとは言いがたい。
一回押し込めれば325や235気味に選手を配置し、大外の幅を活かしながらサヴィオに前向きで持たせるor垣田細谷に背負わせて周囲が飛び込むorシンプルにクロス、出来れば大外のサイズある逆SBが飛び込む、という形はいくつか見えた。
根本的に前線5枚配置を整えるだけの時間が作れるか、というところはシーズン開幕当初からほぼ変化がないため、今後も選手個々への依存がありそうかなと思う、その中で難しいタスクを背負いながらCHとして飛躍的に成長した戸嶋の存在が大きすぎる。

その他感想

  • 柏の山田は良くやってるけどサポーターから評価してもらいにくいよなあと思う、逆に言えば山田の良さを教材として記事を書くのはアリかもと思っている
  • 手塚は期待されている保持と前進パスの能力を考えるともっと頑張ってほしい
  • ガンバは狭いところでも平然とプレーする宇佐美の良さが良く出る仕組みだなあと
    • 追い越しが得意なメンツをしっかり周囲に置いているのがまた上手
    • 鈴木の配球能力、ちょっと次元が違うかも
  • サヴィオ、ずっとスーパーだなこの人
    • ぶっちゃけなんでJリーグにいるのだろうかレベル
  • 細谷、五輪後になんか背負うの上手くなった?
    • ここまでばたつかずに背負えるのなら今後の攻撃面においてめっちゃ頼れる
  • 柏のここからの伸びしろ、どれだけあるだろうか
    • 前線5枚配置(SB両押し上げ)が意図的なのであれば嬉しいのだが
    • とはいえそもそも押し上げる時間を作れるかは相手次第でもある
  • 記事の書き方のお話
    • ぶっちゃけると最近やってたような時系列振り返りって簡単なんだよな
    • 起きたことをそのままメモっていくだけで、試合全体を見る大局観のトレーニングには繋がってない
    • で、個人的に「俺は個々の現象見るのが得意だけど試合の推移を追うのが苦手」だと思っている
    • なのでこの書き方は得意が出せるが苦手克服に繋がらない
    • つまり、今後はあえて時系列振り返りをせず、試合を一つの塊としてまとめるレビューを練習したい
ガンバが強いと言われる理由が分かる試合でした、そりゃ強いわ、と思いつつこれだけしっかりしたゲームコントロールをしていくと理不尽ゴールで殴るのが逆に難しい、ダワンとかセットプレー宇佐美砲とかになるのかなと思ったり。個人的にはフィニッシュ直前までボール大事に方針で貫いてみて欲しかったりします。

一方の柏は、中断前に課題じゃないかな、と思っていた部分に手を付けていたので好印象。一方で意図した攻撃の上積みは今シーズンちょっと厳しいかもなと思っています、最前線は随時必要な動き出しをしてくれているので裏を取ったり斜めに抜けて陣地回復したりと飛び道具前進は出来るのですが、しっかりとした保持前進はCH+サヴィオへの依存度がやや高く、あと相手の守り方次第。
ただ困ったときのロングボールが今まで以上に計算立つようになった、これは推進力が高くロングカウンター気味の攻撃を得意とする柏として超助かることなんじゃないかと。ひとまず守備の改善は見えたので、攻撃の変化を欲しがりつつ応援していきたいです。

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