2024年 J1第24節 柏vs川崎「家長の収支計算と柏の試行錯誤」

2024年7月20日土曜日

2024J1 川崎フロンターレ 柏レイソル

t f B! P L




EURO2024のクロアチア総括記事もちゃんと書かなくては、と思いつつ初心に返って
観る→書く→読む...という無限スパイラルをもっと量積まなきゃ!という気持ちでマッチレビューを書く。

今回は柏vs川崎。
川崎は柏に相性良いイメージだなーと思って調べたら、最後に柏が勝ったのは2017/10/25の天皇杯だそうです、なんと7年近く川崎は負け無し!

順位もお互い残留争いの安全圏一歩手前、という苦しいところで競っているためどっちも落としたくない試合、特に川崎はこんな順位で停滞している場合じゃねえぞ!という雰囲気がありそうな気も。

ざっくりレビュー


開始早々に川崎がさくっと2点を先取。

2点ともイレギュラー配置から綺麗なクロスを入れてのゴール。

1点目は一度ジエゴの背中に回ってから前に入ってくる山田新が偉いというか、小林を見習ったような合わせ方。あとアシストをした三浦はこのシーンに限らず、試合全体を通してめちゃめちゃ良いパフォーマンスを見せていたと思う。

2点目は家長をドフリーにするとその質のクロスが上がってくるよね、というシーン。
同じようなセットプレー崩れの展開でも川崎は大外をしっかり管理出来ていたのに対して柏は中のマークも大外もちょっとずつあやふやなシーンが失点以外でも見受けられた印象。山田はワンタッチゴーラーとしての動き出しが良いなあ。

で、すぐさまセットプレイから柏が1点を返す。
大外の折り返しというのは一つの定番だが、マイナス気味に折り返したことで川崎のゾーン守備からちょっと外れたところにボールを送れたことが大きい。

スコアの動き自体はバタバタと早く動くものの、試合の中身としてはそこまで大きい動きはない気がしている。

柏としてはチャンスがあれば前プレをかけてロングボールを蹴らせることで回収したい、無理ならしっかりミドルでブロック構築してカウンター。

対する川崎はなるべくボールを握りたい、ただ相手から取り上げるところはそこまで強く望まない、という雰囲気。
気温が30℃という過酷な環境を踏まえても、お互い強烈なプレスというのはそこまでなく、どこで奪いに行くか、どこで止めるかの判断が問われる展開に。

柏の構えとしては、基本的に2CB放置、降りて受けに来る中盤はなるべく捕まえたい意図が見えた。特に大南が持った時は選択肢を削りながら少しずつ詰めることでロングボールを蹴らせて回収する、という一つの形を作ることに成功。

これに対して川崎は
①佐々木の運び出し
②家長の出張
という解決策をとる。多分家長は独断。
ビルドアップと言うのは必ずしもシュートに結びつける必要は無く、いったんハーフコートまで運びたい!そうすれば相手守備は構えて守るから陣地制圧が出来る!という狙いもある。



なのでビルドアップの最終目標はもちろんゴールなのだが、中間目標としては
「リスクが小さくなる、あるいは相手が構えて守備に切り替える位置まで制圧する」
という考え方が出来る。
前線から人を下ろしてでも前進する必要があるのはこのためだったりもする。最初のラインを突破しないことには攻撃できないだけではなく、ミスしたときのやばさが段違いなのだ。

そういった意味で、家長の列落ちは確かに前進の確率を上げ、いったんの制圧には効果的だったと思う。柏から見れば、数を合わせようとしても明らかに足りなくなってしまうわけで。

ただこの家長の動きには後述するデメリットもあるため、より効果的なのはCBの運び出しだと思う。前線を薄くしたり配置のバランスを崩しすぎることなくボールを前に進められる。その分要求されるスキルや判断力は高いが、佐々木は勇気を持って前に進むシーンがいくつか見られたし、柏はなかなか阻害することが出来なかった。


柏の保持に対する川崎の対応は、脇坂を1つ前に押し出し442的配置でCB放置、その先を規制していこうというミラーに近い対応。
柏は以前からCBCHでの前進というところに課題を抱えているため、合理的な対応である。

ただ柏も以前からちょっとずつ変化しており、この試合ではアンカーのようにCHを一人中央に固定してみたり、逆にCHの列落ちを利用して古賀が運び出してみたりと色々模索。
また初スタメンの垣田をターゲットにしたロングボールからSBが背後への抜け出しを狙ったり垣田木下の関係で時間を作ったりとやれることは少し増えていそう。

よってお互い、ある程度運ばれることは許容しつつミドルブロックで止める、という狙いがありつつもミスがあればカウンターを撃ち合う、という絶妙にやりたいことが出来ない展開。

特に川崎の山本はらしくないパスミスが多く、被カウンターが起こりがち、また柏も攻撃の中軸を担っていた高嶺が不在であるため勝負に出るパスがなかなか出せず、停滞したところをミスる、というのはちょっと目に付いた。


家長の修正と柏の交代策


家長の出張によって前進が安定するのと引き換えに、攻→守への切り替え時に川崎の右サイドが手薄になる、という現象が前半はずっと発生していた。ましてやそっちサイドはサヴィオジエゴという柏の長所的サイド。
柏の攻撃を一回遅らせることが出来れば脇坂なり橘田なり山田なりが埋めることはできるものの、奪った直後にそこに向けて運ばれると際がむき出しで狙われることになる。
その狙いをつきつけ川崎の守備陣を寄らせてから大きく逆サイドへの展開、という攻撃もあり柏としては奪えればチャンスはある、という手応えだったように思う。


後半に入るとおそらく修正があったのか、家長はバックラインへの出張がほぼなかった。
それでもレーンが被らない、かつ必要なレーンにいる、DFとの距離が近くてもノンストレスでプレーできる、という点でやはり役割は発揮できていたように見える。右の攻撃が家長のレーン取りに寄って決まる一方、左の攻撃はマルシーニョの位置取りに随時合わせて必要なサポートを取れる三浦の賢さが光る感じ。

それでもなぜか家長の周囲には人が集まってしまう現象が発生し、結果的に出張とそこまで変わらないオーバーロードが発生していた。
家長的には集まりすぎない方が引きつけたときに生まれるギャップは広いし走れるスペースがあれば走るはずなのだが、渋滞してしまってはボールを循環させるしかない。
ここへの修正として、家長を下げて右へ小林の起用という形で川崎は修正を図る。

一方の柏は前線が定位置攻撃過ぎるという点を見てか、垣田→熊澤、山田→小屋松を投入。機動力+単独での仕掛けを期待されてなのかなと。
小屋松は横幅確保からのドリブル勝負、熊澤は膠着したときにボールを引き出したり逆に斜め外へ裏取りしてスペースを活用したりと、足りない部分のタスクをしっかりこなそうとしていたように思う。

後は交代で入った大島がレイソルのプレスを分断するような縦パスを連打、前プレをかけるのかミドルで構えるのか揃わないと間延びするスペースをしっかり利用してギアを入れ直したことが川崎としては大きかった気がする。72分のプレスをかけられながらフリーを見付けて放ったパスはお見事。

柏は以前から指摘しているが、前からプレスするのであればここは絶対後ろから押し出して捕まえないといけないところなのだが・・・
ぶっちゃけ前プレが実った場面よりも分断を利用される場面のほうが多く、特に川崎のスタイルと相性は悪いため割り切って構えても良いんじゃない?だめ?前から行きたい?と思ってしまう。

最終的にはPKストップも含めて川崎が競り勝ったが、ぶっちゃけ内容はどっちも手応えが足りず、どっちが勝ってもおかしくなかったという率直な感想。レフェリングに関してはノータッチで行こうと思います、柏川崎どっちも不満有ると思うし。


柏のジレンマ


前節の途中からに続き、今節はスタートからツインタワー構成で挑んだ柏。
実際セットプレーから垣田が決めたり自陣からのロングボールだったりと効果はある程度見えた。

一方で、柏のチャンスは基本的にサヴィオの理不尽から生まれることが多い。となると空中戦ではなく地上でサヴィオにボールを託したい、となってしまう。
結果として、ターゲットが中にいるのだが簡単にクロスを上げるのでは無くやり直す、という現象がこの試合では見られた。
長い時間ボールを持って押し込んでいた、と見ることは出来るが実際はペナ内への侵入を含むチャレンジがうまく出来なかったに近い。
変化をつけようとあれこれ試していたサヴィオと古賀は好印象。サヴィオはいつもスーパーなのだが、この試合ではジリジリと高い位置に出ながら中にパスを打ち込んで勝負しろ!と伝える古賀が偉かった。

中が同数ならシンプルにクロス勝負、しっかりセット守備されているのならピヴォ当てよろしく打ち込んでワンツー気味の崩しorペナ角アタックから大外クロスの折り返し、あたりが具体的な攻め手になるかな?と俺の脳内で想像したがここをどう攻めていくのか、中断期間に整理できるか注目したい。


気になったポイント箇条書きで


  • 際は手癖を直さないともったいない選手だなと率直に思う。柏にいたころの上島とか、福岡の宮とかもそうだけど、ちゃんと勝負できるフィジカルポテンシャルがあるのに手癖で不要なファウルをしてしまうと単純に損かなあと。
    • 特にこの試合、川崎としては柏の高さというのは嫌だったはずで、不要なファウルはしたくないと思うんだよな。
    • それはそうとして、そろそろ際のフルネームを覚えなきゃ、と焦っています
  • 柏の2タワー起用は良いところも悪いところもひとまず見えた感じがする。
    • ロングのターゲットとしては垣田の方が強く、逆に器用なことが出来るのは木下。
    • ただ垣田も木下も、裏への走りは積極的に行ってくれるためもうちょい狙っても良さそう
    • 細谷が帰ってきたときにどうなるかだけど、個人的には細谷垣田でスタート、後半途中から木下を予想してます
    • あとは周りがどう活かすか。せっかくターゲットになってくれても2列目のサポートが遠いとか、足下から繋ぐつもりでポジション取ってるから孤立しちゃうとか
    • 38分の犬飼のロングボールがその典型例。2列目以下は足元での前進を考えて位置取りするなかで垣田をターゲットに。
    • 通ったとしてもサポートが遠い、これを狙うのであればCHのどちらかは高い位置を取るかSHが絞って落としを受けられる位置にいたいよね
    • 一方で可能性を感じたのは、サイドに流れた垣田が頭で逸らす→ジエゴが走ってるぜパターン
  • 大島はやっぱりうまい、特にあれだけ中盤にスペースが生まれる展開ならばやりたい放題に
    • 怪我なく頑張ってください
  • 49分のチョンソンリョンのクリア、繋げないことにバチ切れする山本
    • 川崎としてはこういうのちゃんと繋ごうよ!という感じだと思うし、そのための上福元獲得なんだよなあと
    • ただ現状はシュートストップで失点を減らしてしぶとく戦う、という点でソンリョンなのかな
    • 実際この試合ではチームを救っているし
  • 山田新が良い
    • CBが詰まったときは適切なタイミングで縦パス引き出せるし、ゴールゲッターとしての動き出しも秀逸

感想


良くも悪くも、降格圏一歩手前のチーム同士らしくお互い上手く行かないなりに藻掻く試合になったなと。
その中でしっかり決定機を決め、PKを止め、メンタルの回復には最高の勝ち方をした川崎。ただ修正点は多いだろうし、中断期間にどこまでテコ入れ出来るか。
ネガトラとSB周辺の守備辺りが何試合か見てて気になった部分なので中断明けに見たいなあと思う。

柏はほんのちょっとずつ保持に対してのトライだったり新しい攻め方を見せようとしているが模索が続く。練度が上がってる、と言いにくいのが辛い。保持にこだわりがある雰囲気は見せるがルールがあまり整備されないので毎回アドリブチックになんとかしようとしてなんとかならない。

一方で守備時の課題が「SBとSHの連携」「奪うか守るかの判断共有」というところでずっと続いているのでそこを中断期間で立て直したい。
あとは高嶺不在時に誰が縦パス入れるんだというところでみんな競ってほしい。

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