暑い、あまりにも暑い。
そんな中、久々に現地で試合を見た。なので頑張ってマッチレビューを書こうと思う。
因みにこの試合、ビールの注ぎ方だけでメニューを構築するというビール好きにはたまらないスタグル(スタドリ?)、「ビールスタンド重富」さんが出店していた。
暑くて仕方がない日に飲むビールというのはなぜこうも美味しいのか。
ということで、久々の現地観戦で見てきたことを映像見返しながら文章整えてマッチレビューだ。
システム以外の戦術を学ぶには最適な試合
先に言っておくと、この試合はどちらもほぼほぼ同じ配置で進んでいく。
だから、いわゆる4-4-2とか5-4-1というシステム、フォーメーション、配置なんて呼ばれる物はだんだん分かってきたんだけどそこから先を知りたい!という人にはもってこいのし合いだったんじゃ無いかと思っている。
そこで今回のマッチレビューもそこにテーマを置きつつ書いてみたい。
システムとして羅列される番号は同じでもどういった変化が出るのか、それが試合に対してどんな影響を及ぼすのか、という点を念頭に置きつつ書いていこう。
両者の配置
配置は両者ともに、5-4-1系のシステムだ。
このシステム、5バックと取るか3バックと取るかは人や媒体によって変わってくるのだが、筆者は大して区別をしていない。
大事なのはCBの枚数、CHの枚数だと考えている。
ということで、両者の配置がこれ。
基本的に役割としては、
- 守備時は541として並ぶ
- 攻撃時は横幅をWB、5の両サイドが担う
- 4の両サイドは守備時SH、攻撃時はインサイドハーフ(IH)と呼ばれる役割
という形。
ではここから、両者の役割と動きの傾向を通して違いを見ていきたい。
この手の配置は、守備ではそう大きな違いが現れることは少ない。この試合でも、プレスの開始位置等原則は大きな差が無かったので、攻撃面で解説していく。
とは言っても攻撃を解説すれば、対応する側の動きも合わせて触れるためどちらも解説することにはなると思う。
広島の場合
まずは広島の場合。
この試合で見えた広島の特徴として、
- WBは裏取りよりも足下で起点作り
- そのスペースはIHが使う意識強め
- 1トップは裏や降りてきての起点作り
という点が上げられる。
1.WBは裏取りよりも足下で起点作り
図にすればこんな感じ。
基本的に広島のWBは高い位置から裏を狙うと言うよりも、落ちながら足下で受ける事が多い。
ここをフリーにするとただただ運ばれてしまうので、放置しない程度に横浜もマークに付く。
結果として「前は向けるが簡単には運べない」という形ができあがる。
筆者の推測だが、CBからのパスコースがゼロになることを避けたかったのでは無いかと考えている。
2.そのスペースはIHが使う意識強め
下がっていく広島のWBに対して横浜がついて行くと、スペースが出来る。そこに抜けていくのが広島IHたちだった。
このスペースへ森島とエゼキエウが走り込むシーンが多く見られた。
だがなかなか簡単なパスコースではない。WBから出す場合、タッチラインに沿ったパスになるためトラップの方向や次のプレーに制限がかかりやすい。また横浜のCBが監視しやすいこともあって、そもそもパスを出した方が有効だというシーンが少なくパスが実際に出た本数は多くなかった印象。
3.1トップは裏や降りてきての起点作り
この試合で初のリーグ戦スタメンとなった棚田は、動き出しの数を多く試みて裏や一個ずれてワンタッチ気味に起点を作ることに苦心していた。
システムのかみ合い上、どうしてもCBに管理されやすいのがこの試合の構造。2CBの間を狙える4バック相手とは違い、明確に真ん中のCBと戦うのが宿命となる。
サイズ的に背負うプレーが難しいのもあり、とにかく動的に起点を作るか、タッチダウンパスと呼ばれる一発で裏を取るパスを狙っていた。
その時に効いてくるのが、IHが抜けたスペース。
CBの一枚を外に引きずり出すことで、スペースが生まれる。降りながらワンタッチで捌くプレーならば体格差があっても起点となることが可能だ。
ということで、1トップはこの仕事を繰り返し試みていたが、
- タッチダウンパスがなかなか出ない
- 真ん中のCBが明確にマークに付くため裏が取りにくい
- 降りたときに、ワンタッチではたける味方が居るシーンと居ないシーンが混在する
という点でちょっと苦労していた。
起点を下に作ることで生まれた展開
とはいえWBが引き気味に起点を作ることで、保持しながら前進したいけど蹴るしかない!と追い込まれる場面は減らせていたとは思う。
裏へ蹴る場面も蹴らされるというよりは意図して走っていることが多く、この点は功を奏していた。
一方でデメリットというか、上手くいっていない場面もあり。
IHが裏へ抜けると、中間でボールを捌く選手が減ってしまう。
そして広島のCHはバックラインからの前進を助けているため、前線との距離が開いてしまう。
結果として、1トップが降りない限り空洞化が発生してしまうことになる。
もちろん空洞化することが絶対悪、というわけではない。だが保持しながら前進していくのであれば、隙間隙間に人が立ってパスを引き出す、次の受け手になるという作業が必要となってくる。
平たく言えば、WBが下がりIHが裏へ抜けることで前後が物理的に遠くなってしまうケースが気になるというところである。
とはいえ基本的には無理せずハーフラインまで進む、というミッションが出来ていたのでこれはこれで狙い通りだとも思う。
ちなみに上手くいったケースの一番いいサンプルは前半5分の保持。
取り上げたポイントがほぼ全部出てるので、気になる人は見てみよう!
横浜FCの場合
対する横浜を見てみよう。
- WBは高い位置で横幅を確保する
- IHが広めに動いて起点作ったり1手先の受け手になったり
- 1トップはエアバトル
同じ項目を対比させるように書いてみた。
1.WBは高い位置で横幅を確保する
先の広島とは違い、横浜のWBは高い位置を取る。
その上で隙間を通してやり直して、という形が基本形。
より正確に言えば、WBが前に張り気味なことで相手を押し下げスペースを作る。
広島は裏のスペースを空けていたが、横浜は手前にスペースを作ることが多かった。
こんな感じ。
2.IHが広めに動いて起点作ったり1手先の受け手になったり
ここを活かすのがIH。
特に横浜のIHは自由度が高めで、ビルドアップの出口になったりCBの脇まで降りて前進を手伝ったり。
CHとIHはそこまで固定されず、4人でバランスとってやりましょうという雰囲気。実際ガチガチにすると前進の起点が少なくなるためありなのだが、それを成立させたのは伊藤山下の能力による部分もある。
3.1トップはエアバトル
この試合のスタッツを見ると分かるのだが、主にボールを握ったのは広島。横浜は保持できそうなところはチャレンジしつつも1トップへのロングボールからスタートするシーンが非常に多かった。蹴らせようとゴールキックから圧をかけていた広島の対応も有ったと思う。
1トップがエアバトルに徹する利点は、見なくても蹴れること。
動き出しで勝負のタイプであれば、それを見逃さないようにプレーしなくてはならない。だがエアバトラーであれば見なくてもそこ目掛けて放ることが出来る。そのぶん他の判断をギリギリまで探すことも可能。
なのだが、ここはJでも屈指の空中戦マスター荒木がかなりの勝率を誇っていた。
割り切りと保持の狭間
このように、保持出来る部分はなるべく丁寧に保持を目指しつつ、一方で割り切ってあっさりとロングボールを放ることも厭わない横浜。
だがロングボールが簡単に通らないため、セカンドボールの回収もなかなか出来ず広島に押し込まれる時間はやはり長かった。
それもあって、ポゼッション率が66:34という数字になっていた。
広島が抱えた課題と野津田の振る舞い
広島がこの試合でも見せた課題として、CHのスクランブル化が有ると思っている。
先にも述べたように、どうしても空洞化しがちな動きが多い状況で、前へ前へとサポートを強める意識が強かったのが川村。
彼の前線への推進力や飛び出しは武器なのだが、一方でCHの配置が崩れ、カウンターを招いたりやり直すパスのコースが減ったりという部分が目に付いた。
それをカバーすべく、徐々にアンカー気味に振る舞い始めたのが野津田。
カウンター時にフィルターとしてストップしたり、一人で3CBからのパスコースをひたすら作ったりと時間が進むにつれコントロールを試みる姿勢が強まっていく。
過去にアンカーとしてプレーしていたときは若干動きすぎる癖が見えていたがこの試合の後半は素晴らしい動きをしていたと思う。ぶっちゃけ野津田を残して川村を下げると予想していたぐらい。
一方で焦りも見えたような雰囲気の川村は、前線に残り気味になるがパスコースとして機能しきれなかった。実際に中盤を作りボールを動かす中心となったのは野津田と森島という印象が強い。
横浜が今後求められること
一方でエアバトルに勝てないと厳しい面を見せた横浜。
もちろん押し込まれた中で1失点に抑えたのは素晴らしいが、広島としては3点取ってもおかしくないと思っていたはず。
一方でしっかり繋いで前進する際、中央付近でのエラーが少なかったがサイドにボールが動いて行くにつれて難しい場面が増えていった。
より試合運びを安定させていくのであれば、蹴らずに前進する頻度と精度を上げていくことが求められそうである。
山下伊藤、特に山下の働きは大きく替えが効かなそうだなあと思っている、個人の能力で解決している場面も多々あったのでここをどう考えるか。
あとはボールを失っちゃいけない確実性が求められる場面でのミスを減らしたい。
得点に直接戦術が関わるわけではない
この試合のゴールシーンは、上記したような事象が関わってるとはなかなか言いにくい。広島の得点は完全に柏の抜け目のなさでもぎとっている。
横浜の得点に関しては、横幅を高い位置で取っていたことが良かったとか川村のポジショニングが前目過ぎて1CH気味になったところから展開されたとか、理由として挙げようと思えば出来なくはない。が、実際選手目線で言えばサイドで2人かけて対応しながら内側にぶっちぎられたところが致命的すぎた。
というように、ゴールなんてそんなもんで決まってしまう。
戦術の意味
それでも戦術とは、必ず試合の内容に関わってくる。
チャンスを増やし、ピンチを減らす。それが大事なことであり、その結果がどうなるかは運もミスも全部関わってくる上にサッカーのチャンスがゴールになる確率なんてとても薄い。
だからこそゴールシーンだけに囚われず、ピッチ上で何が起きていたのかが見えるようになると観戦は楽しくなる、と筆者は思っている。
システムや配置は分かってきたけどその先が難しい、役割ってなんだ・・・
という人はこの記事を読みながら試合を見てみて欲しい。
同じ配置をとっていてもこれだけ違う動きをするのか、という意味で良いサンプルになる試合だと思う。
それを目標にこのマッチレビューを書いた部分が結構大きいので、是非。
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