2024年 J1第15節 柏vs札幌 試合の時系列に合わせてレビュー

2024年5月20日月曜日

2024J1 コンサドーレ札幌 柏レイソル

t f B! P L

 



柏vs湘南のレビューを書くと言っておきながら、超倦怠感にやられて書けませんでしたごめんなさい、ちゃんと試合は見たんですけどね。

ということで、柏vs札幌を書くに当たってざっと湘南戦も見返した上で、柏vs札幌ももう一回見ました。リアルタイムで見ていたときに、前節から共通した部分が気になっていたので。

今回は試合中の時系列や出来事に合わせてレビューを書いてみました、なので興味がある人はこれを手元に置きながら見返すと面白い、かも。

柏のベースと札幌のベースの噛み合わせ


柏は今シーズン442を基本的に貫き続けている。

特に守備時、相手のアンカーが2CFの間を狙っていてもそこに配置をずらして当てることはなく、あくまでも2CFが頑張って絞って限定、押し出してマークを捕まえるときは全体が押し上げる。

守備には滅茶苦茶ざっくり分けると二つの考え方があって

①相手の配置に自分たちを合わせる
②相手の配置に関係なく自分たちの立ち位置で守る

という中で柏は後者を選んでいる。

不慣れな立ち位置になることがない反面、かみ合わせの相性が悪かったりウィークポイントを狙い撃ちされると修正しにくいのがこの方向性。

442守備に対するセオリー的な回答の一つが、CF脇から運ぶというもの。

前節の湘南は特にここを自由に活かしながら前進、そして柏のSHがつり出せれば湘南のWBが空いて縦にゴリゴリ前進、という形を見せていた。

柏の右サイド、湘南の左サイドでサヴィオより高い位置を取った畑がイキイキしていたのはここら辺に原因があると思う。

そして札幌と言えばブレない415的配置なので、中盤が空洞化し横幅を活かしながら攻める感じ(今シーズンは全然見れて無いので細かい変化とか分かりませんが見た感じそこかで変わらず)。

今まで同様に前線から柏が守備をすればGKCBDHでひし形を形成する札幌がファーストプレスを交わしてサイドへ展開→柏が圧縮すれば逆サイドへ大きく展開、なんて流れも若干予想できるなあなんて思ってたりした。


試合を見てみて


札幌にとって一つ形になりそうだったのは前半4分の形。

キムゴンヒが犬飼を引きつけながら縦パスを受けた瞬間、ジエゴの両脇で近藤と馬場がフリーになったシーン。

直接そこを使うことはなかったものの、柏のSBに対して数的優位を押し付けやすい配置の中でCFにパスを当てればバックラインの穴を作れそうだよね、というのが見えた部分。

柏の攻撃は基本的にファストブレイクをまず狙う形。熊坂の前線起用は空中戦や背負いの役割を期待したかなと予想してます。細谷はたまにバレてないこともあるが背負ったり起点を作る役割がそこまで上手くない。なので相方はそこを求められることが多かったりする。小屋松は列降りのタイミングで起点を作ってたりしたし。

とはいえ熊坂はいっぱいいっぱいになってプレーしながらもなかなか有効な起点になり続けることはちょっと難しかった。これは個人のクオリティ以外にも色んな原因があるんだけれども。

細谷の裏取りは相変わらず馬力で可能性を感じる、と同時に札幌のラインコントロールが揃ってないかもというシーンもいくつか。12分のロングボールが顕著だったかな。


柏の守備は基本的にCBを放置し、アンカーへのパスコースはCFが閉じながらチャンスがあったら前に出ましょう、という意識。

その上で442を保ちつつ、という構え方ではあるのだが札幌のサイドチェンジが通る通る。

そもそも配置的に柏のCHが捕まえる相手がなかなかおらず、かといって降りてくるキムゴンヒを渡すわけにもいかない。結果CBがつり出されたり、SB(特にジエゴ)の周辺で数的優位を作られたり、というシーンがいくつか。この現象は試合を通じて柏を苦しませることとなる。


ここに関しては、隙あらば前からはめ込みたい柏の事情が大きい。はめ込む前提で立ち位置を取る以上、背中でパスコースを管理したりSBにマークを任せたりと前目に立つことが多い。

そこが実れば21:20みたいなボール奪取→カウンターを狙うことも出来るし、逆に利用されるとSBが晒されるという危険性がある。

もちろん全てを前目に立つわけではなく、しっかり引いて構える場面もあるのだがそこでCFが長い距離を走ってサイドまでプレスに出ることになっているため、前線の消耗はどうしても激し目になる。

守備のアグレッシブさは柏のカウンターと相性の良さはあるが、そもそもの配置で噛み合わないときにどう対処するんだい!というのは前節の湘南戦から共通して起こっている問題だ。

もっと442の練度とスライドの速度、奪うのかブロック形成するのか判断共有する、その制度を詰めていく方針に見えるので気長に成長を待つことになるとは思っている、というか覚悟している。だとしたらあのジエゴの捕まえる判断は明確なエラーと言うことになってしまうのだが。


先制点は柏。ニア逸らし→ファーから折り返し→戸嶋。

いったんファーに飛んだボールを折り返す、その瞬間にマークは外れやすい。ボールの動きを追うとマークとボールの同一視が難しくなる、という古事記にも書かれているぐらい定説なのだが分かっていても難しい。どこまでデザインされたプレーかは分からないけど綺麗に決まったゴールだった。

23分の札幌が作った決定機も、先程述べたようにCBを直接アタックする形。

この前後、柏のCHは捕まえるべき相手がおらずなんとなく場所を埋める形になってしまう、だが札幌の配置上サイドが分厚くバイタルはそこまで人がいないので出来ることなら熊沢が頑張ってプレスをかけにいったところまでCHが担当してもいいのかなあとちょっと思った。プレスをかけずに待つ、という判断自体は悪くないのだがケツふきをCFにやらせすぎてしまうと長所であるカウンターの馬力が下がってしまう。もう少し中庸の守備を身に付けられればここら辺のゲームコントロールも出来そうだよなあと言うシーン。

実際、直後の26分にはCHがプレスを押し出したところからボールを奪取しカウンターまで繋げられている。442で構えると言っても奪うときには人ベースで捕まえる形になる以上、どこから捕まえるかのコントロールと仕込みがもう少し欲しいなと思っちゃうわね。27分に右サイドまで出張して守備を助けた白井の守備を見ると良いじゃん、って思うし。

29分、近藤がシュートを打ったシーン。

駒井の列落ちに対してジエゴがついていき、その裏を利用してキムゴンヒ→近藤。

柏は442の配置で守るならジエゴは絶対について行っちゃいけないし、ついていくのならCHはもっとCBとの距離を考えて守らなくてはならない。こういう判断のミスはゾーン重視の判断で揃えるのか人を捕まえる判断で揃えるのかがブレているところかなあと。

古賀犬飼は共にスピードがそこまでないため、本来なら落ちていくマークは中盤に渡したい、この試合の中盤は捕まえる人が少ないためなおさらそう。ここは事前準備というか、試合前の仕込みはしていないのかな、と感じた点。

30分前後から、荒野が積極的にサリー→3CB化してより中央の空洞化をさせサイド起点に攻めるようになる札幌。

配置で優位を握りながらも最後のシュート手前で手間取る札幌、
ロングボール中心に攻め手を探すも思ったように繋がらず、むしろ運びながらのカウンターの方が刺せそうな柏。

このちょっとちぐはぐな展開は前半のみならず、

後半開始早々に札幌の同点弾。

柏の守備としてはニア、ファー、真ん中とセオリー通りに待っていたのだが札幌はニアを捨てて真ん中に二枚、意図的かどうかは分からないがこれが結局こぼれ球に対してフリーでシュートを打てる要因となった。

柏としては、クロスの対応自体はセオリーに則っているので難しいところ。強いて言うならジエゴがどうにかクリアするぐらいかなあ。CHがセカンドボールを、と考えても戸嶋はサイドの守備に加勢し白井もPA外でスペースを埋めていた。

ああいう数的同数のクロスに対する守備はゾーンでボールを跳ね返すかマンツーで絶対やらせないマンに変身するしかないのでセカンドボールの予測がいち早かった駒井の動きが素晴らしいというところだと思う。

直後48分にも札幌再び決定機。柏の守備陣を横断するように運びながら一発で縦パスを刺した青木の目とキックスピード、そして柏守備陣のミスを見逃さなかったスパチョークの立ち位置があまりにも素晴らしい。

これは守備において守るべきルールの一つで
「一回入れ替わった配置はプレーが切れるまで入れ替わったままやる」
という暗黙の了解に近いものがある。

このシーンで言えば、犬飼が縦パスに対してプレスをかけていたため関根がいったんCBの位置を埋めていた、だが犬飼は中央に戻ろうとして関根は中央を渡そうとした。その合間を刺したのが青木スパチョークライン。こういう細かいところを見ると試合は面白かったりします。

57分に青木の負傷退場、61分に柏の三枚一斉交代。
ここら辺でキャラクターが変わり、試合の様相も若干変わっていくことに。

後半に入ってから横幅隊だけではなくハーフスペースも使って44配置の隙間を活用できるようになってきた札幌。片方で回して集めてサイドチェンジ、という攻撃よりも同サイドでの攻め切りを選択する場面がここら辺からより増える。ただ69分の菅が逆サイドで裏を狙ったように、ちゃんと横幅隊はいるため使うことも出来る、という状態。

ただそれに関連して、下から丁寧に前進する機会が減る(さっさとハーフスペースにつけるリズムで配置を取る)ようになったため、荒野のサリーが減り、繋ぎたい気持ちもあるけど蹴っちゃう、という現象だったり同サイドの攻めが引っかかったりと攻め込む機会と嫌な失い方が同時に増えるちょっと不思議な現象を起こす。

柏としてはオープンな展開、かつロングボール一本よりもショートカウンター気味の方が得意であるためボールを引っかければ迷わず突撃、かつリンクマンとして動いていた戸嶋に変わり強度が武器の土屋が入ったことでアップテンポに両者が突入。

結果的にオープン気味な展開へと遷移していった。

そんな中でもしっかり2CFの間に立ち、隙あらばそこを自ら運んで剥がしていく荒野はこの配置がもたらす強みを的確に押し付けてくる良いプレーを随所に見せていたと思う。降りすぎれば運んで剥がせないんだけどギリギリで受けるのが偉いなと思った75:56のプレー。

そしてオープンでお互いバタバタする中でのジエゴの決勝点。

札幌の原はセカンドボールをどちらが回収するか見極める前にポジションをあげてしまい、ジエゴに対してマークすることができないままぶち込まれてしまう形に。

駒井のゴールもジエゴのゴールも、ちょっとした守備陣のすれ違いやミスが見逃されずにゴールまで直結する結果となった。


総評


柏としては、横幅使って殴る札幌の意図、というか普段から行っているプレーに対して最後まで決定的な回答を出せずにいた印象。相手の配置に合わせるのではなく自分たちの442守備を、というのはプレーモデルとしてありなのだが明確に配置時点で不利が発生する以上それを解決するには質を高めるしかない。

その点において、荒野vs2CFで優位を取れず運ばれたこと、またSB周囲での数的不利に対してCHがスライドするのかSHを引かせるのかCBはどこまでケアするのか、あまり共通の認識がないまま試合が進んだように見えた。なんとか勝利はしたものの、松本の好セーブや相手のシュートミスに救われた部分は非常に大きい。

また攻撃もロングカウンターがそこまで実らない、細谷は背負うのが得意ではないため起点役は相方とバレている中でどう成立させるのかが難しい。結果としてロングボールによるカウンターではなくサヴィオが高速ドリブルで運びながらのカウンターがメインに。

ただ中盤に入った戸嶋と白井がなんとか保持前進を成り立たせることは出来るようになってきた。カウンター以外の攻め手が更に充実するためにはぶっちゃけ仕込みじゃなくて練度でしょ!というスタイルに見えるため気長に見守る形になりそう。

前節湘南戦から明らかに配置で厳しくなることが予想できる場所に対しての手当がないのでこれはもうそういう方針だと思ってます。で、それは別に悪いことじゃなくてちゃんと上達すれば常に自分たちにとって最良の配置で挑める、不慣れな並びでプレーしなくて済む、という利点もある、ただし練度が上がれば!



札幌は負けこそしたものの後半は横幅隊を上手く使いつつハーフスペースへの縦パスも交えてやりたいことが表現できていた時間は短くなかった。

最後尾からの前進に迷う部分はあったものの荒野が巧みだなあと言う印象。ただ青木が躍動していたため負傷はちょっと痛手になるんじゃないか。

あとゲームテンポが上がったとき、カウンターやセカンドボールに対するポジショニングが曖昧で空洞化するシーンがいくつかあったので攻撃をやりきれないときつい展開を迎える試合は少なくないと予想する。


個人的MVPは攻守に気を使い、潤滑油かつゲームテンポのコントロールをできる範囲で頑張り続けた戸嶋。前進が苦しい場面でボールを引き取り、守備時には中央かサイドの数的不利かを選択する場面でもほぼミスなし。サイドでの起用が多いが個人的に中央でのプレーが好きなのでもっと見たい。ゴールももちろんナイスでした。




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